行政書士 多肢選択式の対策|独学で24点を取りにいく解き方
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行政書士試験の勉強を独学で進めていると、多肢選択式だけがぽっかり手つかずになりがちです。
「択一と記述はやっているけど、多肢選択式は過去問を眺めただけ」 「本番で語群を見た瞬間に迷って、結局あてずっぽうになりそう」 「3問しかないし、対策の優先度は低いのでは?」
3問しかないのは事実です。ただし配点は24点あり、しかも1空欄ごとに点が入る「部分点あり」の形式です。ここを完全な運任せにしている人と、解き方の型を持っている人とでは、本試験で10点前後の差がつくことがあります。180点ちょうどで泣く人が毎年出る試験で、10点は小さくありません。
この記事では、公表されている配点と合格基準をもとに、多肢選択式が独学でどれくらい取りにいける形式なのか、何をどの順番でやればいいのか、そして本番でどう解くのかを整理します。2026年(令和8年)の本試験まで残り約9週間という前提での回し方も具体的に書きます。
結論:多肢選択式は「後回しにされがちな、いちばん割のいい24点」
先に結論から書きます。
- 捨ててはいけない。むしろ直前期に伸びやすい部類の形式
- 理由は3つ。①1問8点と単価が高い ②部分点があるので0点になりにくい ③出題される形式のクセが毎年ほぼ同じ
- ただし多肢選択式そのものの勉強に長い時間をかける必要はない。憲法・行政法の土台があれば、上乗せは10〜15時間程度でも形になる
- やることは「判例と条文を、語句レベルで思い出せる状態にする」+「本番の解き方の型を決めておく」の2つだけ
言い換えると、多肢選択式は新しく覚えることを増やす対策ではなく、すでに勉強した憲法・行政法の知識の”出し方”を変える対策です。だから独学でも短期間で仕上がりますし、直前期の追い込みに向いています。
数字で確認:多肢選択式は3問24点、1空欄2点
まず、思い込みではなく数字で位置づけを確認します。行政書士試験の出題形式と配点は次のとおりです(最終確認日:2026-09-02)。
| 科目 | 出題形式 | 出題数 | 満点 |
|---|---|---|---|
| 法令等 | 5肢択一式 | 40問 | 160点 |
| 法令等 | 多肢選択式 | 3問 | 24点 |
| 法令等 | 記述式 | 3問 | 60点 |
| 基礎知識 | 5肢択一式 | 14問 | 56点 |
| 合計 | 60問 | 300点 |
法令等が244点、基礎知識が56点で、合わせて300点満点です。
そして合格するには、次の3つをすべて満たす必要があります。
- 法令等科目:244点中 122点以上
- 基礎知識科目:56点中 24点以上
- 全体:300点中 180点以上
ここで多肢選択式の位置を見ると、1問あたり8点。空欄が4か所あり、1か所2点で採点されます。つまり3か所正解なら6点、2か所正解でも4点が入ります。
これがどれくらいの重みかというと、5肢択一式は1問4点です。**多肢選択式の1問は、択一2問分に相当します。**しかも択一は1問まるごと外せば0点ですが、多肢選択式は半分わかれば半分もらえます。
行政書士試験 | 出題形式の違い
択一式・多肢選択式・記述式の性格の違い
同じ法令等科目でも、点の入り方と直前期の伸ばしやすさが違います
| 1問あたりの配点 | 部分点 | 直前期の伸ばしやすさ | |
|---|---|---|---|
| 5肢択一式 40問160点 | △ 4点 | × なし(全か無か) | △ 範囲が広く一気には動きにくい |
| 多肢選択式 3問24点 | ○ 8点(択一2問分) | ○ あり(1空欄2点) | ○ 形式に慣れるだけで動きやすい |
| 記述式 3問60点 | ○ 20点 | ○ あり(採点は非公表) | △ 自己採点とのズレが出やすい |
- ※配点は公表されている出題形式別の満点から算出したもの。記述式の細かな採点基準は公表されていません
- ※「伸ばしやすさ」は形式の性質から見た一般的な傾向で、個人差があります
コツコツ資格
記述式が60点と大きいので、直前期はどうしても記述式に意識が向きます。ただし記述式は採点基準が公表されておらず、自分では書けたつもりでも点が読めないという不確実さがあります。その点、多肢選択式は正解が一意に決まるので、やった分がそのまま点になりやすいのが強みです。
なお、令和7年度(2025年度)試験の実施結果は、受験者数50,163人・合格者数7,292人・合格率14.54%でした。10人に1〜1.5人という水準の試験なので、「取りやすいところで確実に拾う」という発想が効いてきます。
どんな問題が出るのか(憲法1問・行政法2問)
多肢選択式の出題は、例年憲法から1問、行政法から2問の計3問です。
形式は次のようになっています。
- ある程度まとまった長さの文章が示され、その中の4か所が空欄になっている
- 下に20個の語句が並んだ語群がある
- そこから空欄に入るものを選んでマークする
- 同じ記号の空欄(「ア」が文中に2回出てくる等)には、同じ語句が入る
素材になる文章は、判例の判決文からの引用が中心です。憲法は人権・統治の重要判例、行政法は行政事件訴訟法や行政手続法などに関わる判例が使われることが多く、行政法では条文の文言そのものが問われる年もあります。
ここで独学者がつまずきやすいのが、**「見たことのない判決文が出てくる」**点です。有名判例であっても、テキストに載っているのは要旨だけで、本試験で引用されるのは判決文の別の部分だったりします。
だから多肢選択式は「知っている判例か、知らない判例か」の勝負ではありません。知らない文章を、知っている語彙で埋める問題です。ここを取り違えると、「もっと判例を覚えなければ」という際限のない方向に走ってしまいます。
独学での対策法:やる順番
多肢選択式に特化した勉強は、次の3ステップで足ります。順番を守ってください。
ステップ1:憲法・行政法の「語句」を思い出せる状態にする(土台)
多肢選択式は語句を選ぶ問題なので、意味は分かるが語句が出てこないという状態がいちばん危険です。択一式は選択肢を見れば思い出せますが、多肢選択式は20個の紛らわしい語群から選ぶため、うろ覚えだと隣の語に引っかかります。
具体的には、以下のような対になる語句を、意味の違いとセットで確認しておきます。
- 行政法:処分・裁決/取消訴訟・無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟/羈束行為・裁量行為/法律上の利益・反射的利益/原告適格・訴えの利益
- 憲法:形式的平等・実質的平等/目的・手段/合理的関連性・厳格な合理性/公共の福祉・必要最小限度
この作業は多肢選択式のためだけではなく、記述式にもそのまま効きます。記述式も結局は「40字で正しい語句を使って書く」問題だからです。多肢選択式と記述式をセットで対策すると、時間の効率が一気によくなります。
ステップ2:過去問を「解く」のではなく「形式に慣れる」ために回す
多肢選択式の過去問は、答えを覚えるためではなく、空欄の埋め方の感覚をつかむために回します。同じ問題を2回目に解くと答えを覚えてしまっていますが、それでも構いません。見るべきは正解そのものではなく、次の点です。
- 4つの空欄のうち、どれが「文脈から明らかに絞れる」空欄だったか
- どれが「知識がないと無理」な空欄だったか
- 語群20個のうち、明らかに関係ない語がどれくらい混ざっていたか
過去問は5〜10年分を2〜3周が現実的な目安です。1年分あたり3問なので、10年分でも30問しかありません。1周は数時間で終わります。
市販の対策本を使うなら、記述式と多肢選択式が1冊にまとまった問題集(各予備校から出ています)が効率的です。多肢選択式だけの専用問題集を新しく買い足す必要は、独学ではほとんどありません。
ステップ3:本番の解き方の型を決めて、模試で試す
これが最後で、いちばん差がつくところです。次の章で詳しく書きます。
本番での解き方(4ステップ)
多肢選択式は、頭から順に空欄を埋めようとすると詰みます。最初の空欄がいちばん難しい年があるからです。次の手順で解いてください。
ステップ1:先に語群20個をざっと見て、グループ分けする
本文を読む前に語群を見ます。20個の語句は、たいてい似たもの同士でかたまりを作れます。「訴訟の種類」「行政行為の分類」「審査基準の名前」といった具合です。この時点で、明らかに文の性質と合わないグループが見えてきます。
ステップ2:空欄の前後だけを読んで、品詞と役割を決める
その空欄には名詞が入るのか、法律の名称が入るのか、判断基準の名前が入るのか。前後1〜2行を読めば、入る語句の”型”は絞れます。これで20個が5〜6個に減ります。
ステップ3:確信のある空欄から埋め、消し込む
4つのうち1つでも確実に決まれば、残りの候補が減ります。同じ記号の空欄が複数あれば、両方の文脈で成り立つ語かどうかを確認できるので、そこは正解の検算ができるボーナス空欄です。
ステップ4:分からない空欄も必ず何か書く
これがいちばん大事です。多肢選択式はマイナス点がないので、空欄のまま出すのは損しかありません。2点をみすみす捨てることになります。20個の語群から絞り込んだ数個のうちどれかを、必ずマークしてください。
時間配分の目安
試験時間は3時間(180分)で60問です。単純計算では1問3分ですが、実際は形式によって必要な時間が違います。多肢選択式は文章を読む必要があるぶん、1問5〜7分程度を見ておくと安心です。3問で15〜20分ということになります。
解く順番については、多くの合格者が「問題冊子の頭から順に解かない」と言います。冊子の最初にある基礎法学・憲法は難問が置かれる年があり、そこで時間を吸われると後半が崩れるためです。自分に合う順番は、模試を使って本番前に決めておくのが確実です。多肢選択式を先に片づける人もいれば、択一を回してから頭を切り替えて取り組む人もいます。どちらが正しいというものではないので、実際に2パターン試してみてください。
残り約9週間の回し方(9月・10月・直前)
2026年度(令和8年度)の行政書士試験は、2026年11月8日(日)午後1時から午後4時までの実施です(最終確認日:2026-09-02)。この記事の公開時点で、残りは約9週間強です。
多肢選択式に絞った、現実的な配分は次のとおりです。
| 時期 | 多肢選択式にかける時間 | やること |
|---|---|---|
| 9月(残り約4週間) | 週1〜2時間 | 過去問5〜10年分を1周。形式に慣れることだけが目的 |
| 10月(約4週間) | 週2時間 | 2周目。憲法・行政法の語句の詰めと並行させる |
| 直前2週間 | 合計2〜3時間 | 解き方の型の確認と、模試での時間配分チェック |
合計しても15時間前後です。多肢選択式のためだけに毎日時間を割く必要はありません。
働きながらの人は、土日のどちらかに30〜60分のかたまりを1回取れば足ります。多肢選択式は文章を読む形式なので、通勤電車で細切れにやるよりも、まとまった時間で1年分をやり切るほうが感覚が残ります。
一方で、憲法・行政法の択一の土台がまだ危うい段階なら、多肢選択式より先にそちらです。土台のない状態で多肢選択式の過去問だけ回しても、語句が頭に入っていないので埋まりません。順番を間違えないでください。
つまずきポイント・この方法が向かない人
正直なところ、この形式には人を選ぶ面もあります。
つまずきやすい点
- 判例を「もっと覚えなきゃ」の方向に走る:素材は毎年変わるので、判例の暗記量を増やす戦略は費用対効果が悪くなりがちです。語彙の精度を上げるほうが効きます。
- 語群の紛らわしさに時間を吸われる:本番で1問に10分以上かけてしまうと、後半の基礎知識や記述式にしわ寄せがきます。時間を決めて切り上げる練習が必要です。
- 部分点を軽く見る:「どうせ全部は当たらないから」と雑に扱うと、本来拾えた4点・6点を落とします。
この対策法が向かない人
- 択一式で法令等がまだ半分も取れていない段階の人:多肢選択式より、行政法・民法の択一を固めるほうが伸びます
- 学習の絶対量が足りていない人:多肢選択式は既存知識の出力形式を変える対策なので、出す中身がなければ効きません
多肢選択式は「土台がある人が、最後にまとめて取りにいく」形式だと考えてください。逆に言えば、すでに択一が仕上がってきている人ほど、ここは短時間で確実にリターンが出ます。
独学の仕上がりに不安があるとき
ここまで書いた内容は、テキストと過去問があれば独学で実行できます。ただし、独学でいちばん判断しにくいのは「今の自分の仕上がりが、合格ラインに対してどのあたりにいるのか」です。多肢選択式に時間を回していいのか、それとも行政法の択一に戻るべきなのか——この優先順位の判断は、独学だと材料が足りません。
通信講座は、その優先順位づけをカリキュラムとして先に決めてくれる点に価値があります。逆に言えば、自分で順番を管理できている人には不要な出費です。「順番を決めきれずに毎週迷っている」という自覚がある場合だけ、選択肢として検討してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 多肢選択式は何点取れれば合格ラインですか
公式に形式ごとの目標点が決まっているわけではないので、あくまで配点からの逆算になります。24点中12〜16点(空欄12個中6〜8個)を取れれば、法令等の合計を組み立てやすくなります。全問完答を狙うより、**「各問2〜3か所は確実に埋める」**という目標のほうが現実的です。
Q. 多肢選択式だけの問題集を買ったほうがいいですか
独学であれば、記述式と多肢選択式が1冊になっている問題集で足りることが多いです。過去問は10年分でも30問しかないので、専用の分厚い教材を追加するより、憲法・行政法のテキストに戻る時間に使うほうが効果的です。
Q. 憲法の多肢選択式が毎回まったく歯が立ちません
憲法の多肢選択式は、素材が難しい年とそうでない年の振れ幅が大きい形式です。歯が立たない年に無理をするより、行政法の2問で確実に拾うという組み立てのほうが安定します。行政法は条文ベースで語句が固定されているぶん、対策が点に結びつきやすいためです。
Q. 空欄が埋まらないとき、時間はどれくらいで切り上げるべきですか
1問あたり7分を超えたら、いったん先に進むのが安全です。マークは必ず埋めたうえで、印をつけて後で戻ります。試験時間は3時間しかなく、記述式3問と基礎知識14問を残したまま時間切れになるほうが致命的です。
Q. 令和6年度の「一般知識等」から「基礎知識」への変更で、多肢選択式は変わりましたか
出題形式別の配点として、多肢選択式は法令等科目に3問24点で置かれています。ただし試験制度や出題範囲は変更されることがあるため、受験年度の試験案内を必ずご自身で確認してください。
まとめ
- 多肢選択式は3問24点。1問8点は択一2問分で、単価が高い
- 1空欄2点の部分点があるので、0点になりにくい。分かる空欄だけでも拾える
- 出題は例年憲法1問・行政法2問。素材は判例の判決文が中心で、見たことのない文章が出るのが前提
- 対策は「憲法・行政法の語句を思い出せる状態にする」+「解き方の型を決める」の2つ。合計15時間前後で形になる
- 本番は語群のグループ分け → 空欄の型を決める → 確信のあるところから埋める → 空欄を作らないの順で
- ただし択一の土台が先。法令等の択一が半分も取れていない段階なら、そちらを優先する
多肢選択式は、多くの人が「あとで」と言ったまま本番を迎えてしまう形式です。裏を返せば、9月のうちに手をつけておくだけで差がつきます。今週末、まずは過去問1年分(3問)を解いてみるところからで十分です。
※本記事は情報提供を目的としたもので、試験の合格や学習の成果を保証するものではありません。試験制度・料金は変更される場合があるため、受験前に必ず公式サイトでご確認ください。
あわせて読みたい
参考にした情報
- 一般財団法人 行政書士試験研究センター「行政書士試験合否判定基準」「行政書士試験実施結果の概要」(配点・合格基準・受験者数などの公表資料)
- 一般財団法人 行政書士試験研究センター 公式サイト(令和8年度試験日程・試験時間)